ジョン・ディクソン・カー

ジョン・ディクスン・カー(1906年11月30日 - 1977年2月27日)はアメリカ合衆国の推理作家です。ミステリーの黄金時代に活躍した作家の一人で、謎ときに主眼を置いた、複雑に構築されたプロットで知られています。

カーは「密室の王者」の異名を持ちます。とりわけ『三つの棺』(1945)は、1981年に、17人の推理作家と評論家によって「史上最高の密室もの」に選ばれました。本作の第17章「密室の講義」は密室トリックを分類したエッセイとしても知られています。

カーは歴史ミステリーの創始者としても知られています。歴史ミステリーとは、歴史小説と推理小説を融合したジャンルのことで、著者の視点から見た過去の世界で、謎を解いたり、犯罪を解決したりする筋を中心とする小説のことです。カーは、綿密な調査を元に、昔の風俗を臨場感たっぷりに描くことで高い評価を受けています。

カーは歴史ミステリーを15作品残しましたが、そのうち3作はタイムトラベル小説でもあります。というわけで、このページではカーのタイムトラベル小説3作品をご紹介します。


ビロードの悪魔

1951年

息つく暇もない展開と独創的なプロット(『ニューヨークタイムズ』紙評)

カーの初刊本の中で最高の部数を販売!

1926年。歴史学教授のニコラス・フェントンは悪魔と契約を交わし、1675年のロンドンにさかのぼった。当時の貴族に乗り移り、その妻が毒殺された事件を解明しようというのだ。しかし、フェントンはその妻と恋に落ち、歴史の流れを変えることを決意する。果して彼は事件を防ぐことができるか?

電子書籍版:ビロードの悪魔 | 書籍版:ビロードの悪魔 (1981年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)


恐怖は同じ

1956年

珍品の誉れ高き、幻の異色作。タイムスリップの果てに待つものは……?

たくさんの男が彼女を抱いた。だが、彼女のハートを射止めた男はいるのだろうか? この疑問に対する答えが、残酷な殺人事件を解決する鍵になるのかもしれない。深夜、寝室で若い美女が絞殺された。しっかり引かれたカーテン、テーブルの上のワインボトル、挑発的な部屋着をまとった女性……豪華な寝室は、恋人たちが密会したことを暗示していた……。

書籍版:恐怖は同じ (ハヤカワ・ミステリ 626 世界ミステリーシリーズ)


火よ燃えろ!

1957年

チェビアト警視がタクシーに乗った時、20世紀のロンドンは霧に包まれていた。警視が降りた時、街には依然として霧が漂っていた。しかし、タクシーは馬車に変わり、時代は1829年だった。

そのころ、殺人は安全かつ儲けになる商売だった。だが、指紋分析といった20世紀の犯罪捜査技術をこの時代に使うことができない。そして、麗しいレディ・フローラとの間のロマンスがどこまで発展しているのか、チェビアトは知らなかった。

だが、昔の風俗や習慣を習っている暇はない。なぜなら、チェビアトは突如として、彼の仕事人生の中で最も巧妙に仕組まれた殺人事件を担当する羽目になったからだ。

書籍版:火よ燃えろ! (ハヤカワ・ミステリ文庫 5-5)