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 このページでは、2008年にイギリスのBBCで放映された『ドクター・フー』シリーズ4のエピソードをご紹介します。エピソードのタイトルは英語のタイトルを私が適当に訳したものですのでご了承ください。放送年月日はイギリスでの放映日です。「あらすじ」の欄では各エピソードの概要を書いてあり、物語の結末には触れていません。でも、すべてを通して読むことで全体の流れがわかってしまいます。その点、お気をつけください。

●シリーズ4の概要

 シリーズ4では引き続きデイヴィッド・テナントがドクターを演じました。本国のイギリス人を対象としたアンケート調査によると、今や彼は歴代ドクターの中で最高の人気を博するまでになっています。新コンパニオンのドナ・ノーブルは2006年のクリスマス特番『ランナウェイ・ブライド』に登場したキャサリン・テイトが選ばれました。彼女は以前BBCのコメディ番組で、厚かましくて図々しい女性を演じて有名になったので、配役が発表されたとき、視聴者からBBCに苦情が殺到しました。あのように柄が悪い女性を毎週見るのは耐えられないという意見がほとんどでした。ところがいざふたを開けてみると、ドナ・ノーブルは面白くて心優しい女性として描かれていたので、視聴者の心を捕らえるまでにそれほどの時間はかかりませんでした。テイトさんの演技力も評価され、彼女に対する批判は称賛に変わっています。


0.タイムクラッシュ (2007年11月16日放送)

脚本:スティーヴン・モファット
監督:グレーム・ハーパー


 五代目ドクター(ピーター・デイヴィソン)のターディスと十代目ドクター(デイヴィッド・テナント)のターディスが合わさり、一つになってしまったので、二人のドクターが鉢合わせ!十代目ドクターは過去の自分について知っているが、五代目のほうは未来の自分を知らない。それでトンチンカンなやり取りが繰り広げられたあと、大問題が発生!二つのターディスが一つになったので時空連続体に異変が生じ、宇宙が崩壊しそうになってしまったのだ。果たして二人のドクターはこの危機をどのようにして乗り切るか?


 11月16日にイギリスのBBCが恵まれない子供たちへの募金を募る特別番組を放映しましたが、その一環として『ドクター・フー』の短編ドラマが放映されました。わずか7分のドラマながら、タイムパラドックスの原理が取り入れられた面白いドラマになりました。


0.呪われた航海 (2007年12月25日放送)

脚本:ラッセル・T・デイヴィス
監督:ジェームス・ストロング


 シリーズ3と上記『タイムクラッシュ』はターディスにタイタニック号が衝突する場面で終わった。タイタニック号といっても、1912年に沈没した船ではなく、お金持ちの客を乗せて宇宙をクルーズする豪華宇宙船のことである。ところが何者かが故意に船のシールドを解除していたので、隕石の嵐が船に衝突、船体に穴が開いてしまう。しかも船で召使を務めていた天使姿のロボットたちが突然、生存客を殺し始めた!ドクターは船のウェイトレス、アストリッド(カイリー・ミノーグ)と協力して生存客たちの命を救うと共に、事故を起こした犯人を探し出さなければならない!


 クリスマス特番として放送されたこのエピソードでは、70分にわたり一大スペクタクルが展開!スケールの大きさは映画並みで、テレビ番組として流すのはもったいないほど。ストーリーは映画『タイタニック』というよりは『ポセイドン・アドベンチャー』を彷彿とさせます。実際、このエピソードは70年代に流行ったパニック映画にオマージュを捧げたものだそうです。オーストラリア出身の大スター、カイリー・ミノーグが特別出演したこともあり、イギリスでの視聴者数は1,400万人に達しました。


1.パートナーズ・イン・クライム(共犯者) (2008年04月05日放送)

脚本:ラッセル・T・デイヴィス
監督:ジェームス・ストロング


 2006年のクリスマス特番『ランナウェイ・ブライド』でドクターはドナ・ノーブル(キャサリン・テイト)に出会った。その際、ドクターはドナにコンパニオンになるよう頼んだのだが、その時点で彼女はその頼みを断った。ところがその後、毎日の平凡な生活に嫌気が差した彼女は断ったことを後悔する日々を送っていた。

 ある日のこと、彼女は仕事で、革新的なダイエット剤を販売している会社「アディポーズ」社におもむく。この薬を飲んだ人々は例外なく脂肪が劇的に減り、やせるというのである。ドナの仕事はこの薬の安全性を調査することだった。そこにドクターも保健衛生局の係官を装って現れる。彼もまた、この薬が怪しいとにらんで調査していたのだった。二人はお互いの存在に気づかないまま、社長のミス・フォスター(サラ・ランカシャー)を見張るために、終業後のビルに忍び込んでいく。そして明らかになったこととは……?


 ドクターとドナの再会に焦点を絞った初回のエピソードは、スリルやアクションも秀逸だったものの、むしろお笑いを強調し、わざと軽く仕上げられていました。ジョークや洒落たやりとりが盛りだくさんで、大いに笑わせてくれました。また、1966年の映画『2150年:ダレックスの地球侵略』で主役を演じたコメディ俳優、バーナード・クリビンズが、天体観測を愛するドナのおじいさん、ウィルフ役で登場しました。好感度バツグンの彼は視聴者の間で大人気を博しています。




4.ソンターラン・ストラタジェム (2008年04月26日放送)
5.ポイズン・スカイ (2008年05月03日放送)

脚本:ヘレン・レイナー
監督:ダグラス・マッキノン


 世界中に輸出されているイギリス車「アトモス」は炭素を排出しないエコカーで、しかもカーナビゲーション・システムが装備されている。ところが、この車を運転中、ナビゲーション・システムが誤作動し、世界中で52人もの人々が同じ日に死亡するという事件が起こる。その裏には「ソンターラン」というエイリアンの邪悪な計画が潜んでいた……。


 「ソンターラン」とは戦争好きなエイリアンで、三代目ドクター(70年代)のとき初めて登場、その後もドクターの仇敵として、たびたび姿を見せています。今回、そのソンターランが新シリーズでよみがえりました。

 このエイリアンは背が低く、顔が丸くてジャガイモを思わせます。ちょっとユーモラスな風貌です。これはCG映像ではなく、背の低い俳優さんに特殊メークをほどこして実現したというからビックリ。その異様な容貌は思わず目を見張ってしまうほど。肌の質感といい、個性的な風貌といい、実にすばらしい!見た目だけでなく性格描写もお見事。生まれついての軍人で残酷、ユーモアのセンスがゼロで律儀、といった複雑な性格です。戦死するときは「すばらしい」と言って恍惚のうちに死ぬのだから始末に終えません。

 今回、シリーズ3のコンパニオンだったマーサ・ジョーンズ(フリーマ・アジマン)が再登場しました。彼女は、ドクターへの愛が報われなかったので、シリーズ3の終わりでターディスを離れました。その後、彼女は最愛の男性を見つけ、ドクターへの叶わぬ思いを断つことができたのでした。愛情面だけでなく仕事面も快調です。医大を卒業した彼女は、現在「ユニット」という軍事組織で医師として働いています。ユニットはエイリアンなど超常現象に対抗する目的で結成された組織で、二代目ドクターのころからちょくちょく登場しており、ドクターとユニットは深い信頼関係で結ばれています。

 シリーズ4はまだ中盤にもさしかかっていないのに、今回の物語は地球規模の大きなスケールで展開、シリーズフィナーレとしても通用するほどの充実した内容でした。次々に大作をぶっ放すパワーはすごい!


6.ドクターの娘 (2008年05月10日放送)

脚本:スティーヴン・グリーンホーン
監督:アリス・トラウトン


 ドクター、ドナとマーサは未来の惑星メッサラインに到着する。そこで三人は人間の兵士たちに捕まる。兵士たちは惑星の居住権を巡って、魚から進化したエイリアン、ハースと長年にわたり戦っていた。兵士たちは、戦闘要員を増やすため、特殊な装置を使ってドクターの手からDNAを取り出し、それを元に若い女性を作り出した。図らずもドクターに娘ができたのだ!


 「ドクターの娘」といっても、通常のやり方で子供ができたわけではなく、上記で説明したとおり、ドクターのDNAから、いきなり成人した娘を作り出してしまうのです。この娘はジェニーと名づけられます。ジェニーを演じたジョージア・モフェットは、五代目ドクター、ピーター・デイヴィソンの実の娘。いわば本当に「ドクターの娘」なのですから、これ以上の適役はありませんね。

 魚から進化したエイリアン、ハースは、口のところに特殊な緑色の液体が入った装置をつけています。これで水の中にいるときと同じような環境になるので、陸上でも活動できるということなのでしょう。なんと面白い発想なのでしょう!


7.ユニコーンとスズメバチ (2008年5月17日放送)

脚本:ガレス・ロバーツ
監督:グレーム・ハーパー


 ドクターとドナは1920年代のイギリスに到着する。そこは美しい自然に囲まれたカントリー・ハウス(田舎の大邸宅)であった。季節は夏の盛りで、その日は庭園でガーデン・パーティーが催されていた。ゲストの中には有名な推理小説作家、アガサ・クリスティーの姿があった。ところが、邸宅内でゲストの一人が何者かによって殺害された。ドクターはアガサ・クリスティーの助けを借りて、犯人探しを始める。


 『ドクター・フー』では毎年、歴史上有名な人物を登場させています。これまでに、チャールズ・ディケンズ、ヴィクトリア女王、そしてシェイクスピアが登場しました。そして今年は推理小説の女王、アガサ・クリスティーの登場と相成りました。

 のどかで美しいイギリスの田園地方を背景に、伝統的な推理小説のスタイルを模倣したミステリー風の物語が展開。お笑いもたっぷりです。これまで本格的なSFが続いたので、一息ついて楽しめる一編でした。犯人探しのミステリーに、実際に起こったアガサ・クリスティーの失踪事件とSFの要素を取り入れ、興味深い物語に仕上がっています。


8.静寂の図書館 (2008年05月31日放送)
9.死者の森 (2008年06月07日放送)

脚本:スティーヴン・モファット
監督:ユーロス・リン


 ドクターとドナは51世紀の惑星に到着する。そこには宇宙最大の図書館があった。実のところ、惑星全体を図書館が占めていたのだった。ところが100年前、そこは突如として閉鎖され、星には人っ子一人いなかった。住民は来訪者に不可解な警告を残していた。その警告とは「生き延びたかったら影を数えろ」というものだった……。


 脚本を書いたスティーブン・モファットは2010年からラッセル・T・デイヴィスに代わり、この番組の製作責任者という大役を務めます。彼は『ドクター・フー』のレギュラー脚本家の一人ですが、書く作品がことごとく高い評価を得ており、ヒューゴ賞を二年連続で受けています。それだけに、彼にかかるプレッシャーは大変なものがあるでしょう。でも彼は今回も期待を裏切らず、非常にユニークな物語を作り上げました。このドラマは、誰もが心の奥底で抱いている暗闇に対する恐怖を描いています。でも単なる安っぽいSFホラーではありません。パラレル・ワールドの概念にひねりを利かせたプロットは複雑で、恐怖、哀しみ、ぬくもり、高揚感など、ありとあらゆる感情を呼び起こす洗練された大人のドラマに仕上がっています。


10.ミッドナイト (2008年06月14日放送)

脚本:ラッセル・T・デイヴィス
監督:アリス・トラウトン


 ドクターとドナは休暇のため、ミッドナイト惑星を訪れる。ドナが高級ホテルで日光浴を楽しむ間、ドクターは美しい滝の宮殿を見るため、クルセーダー50という列車に乗って一人で観光旅行に出かける。ところが途中で列車が故障し、立ち往生してしまう。ドクターと他の乗客たちは列車の中に閉じ込められてしまった。そのうちに、列車をバンバンと強く叩く音が外から聞こえてきた。何者かが中に侵入しようとしているようだ……。


 これは怖い話という前評判が高く、BBCがこのエピソードにつけた「ソファのうしろに隠れる度(恐怖度のこと)」は5点満点中5点!私は「怖いといっても大したことないだろう」と高をくくっていたのですが、いざ見始めたら確かに怖かった!息詰まるような緊迫感とサスペンスでした。

 怖いといっても、最近の映画でよく見かける過激な残酷描写や、生理的な嫌悪感を催すシーンは一切ありません。純粋に心理的な恐怖なのです。得体の知れない生命体に体を乗っ取られる恐怖や、極限状況に追い詰められた人々の行動などが実に巧みに描かれていました。

 この番組にしては珍しく、CG映像はあまり見られませんでした。それでもドラマは一級品です。セリフが激しくやりとりされ、ちょっと舞台劇を見るような趣がありました。特殊効果に頼らなくても面白いドラマはできるという好見本です。

 特殊効果がない分、俳優の人たちに大きなプレッシャーがかかったようです。ある理由で、俳優は別の俳優とセリフをシンクロさせなければなりませんでした。つまり、まったく同じセリフを二人の俳優が同時にしゃべらなければならなかったのです。このドラマを完成するためにスタッフの人たちにかかった苦労は並々ならぬものがあったようです。

 なお、上の写真で眼鏡をかけた初老の男性はデイヴィッド・トラウトン。彼は二代目ドクター、パトリック・トラウトンの息子さんで、旧『ドクター・フー』シーズン9のエピソード『ペラドンの呪い』では若き王を演じました。


11.ターン・レフト(左折) (2008年06月21日放送)

脚本:ラッセル・T・デイヴィス
監督:グレーム・ハーパー


 ドクターとドナは中国系の惑星シャン・シェンを訪れる。二人が別々に市場を観光している間に、ドナは占い師から声をかけられ、無料の鑑定を申し出られる。占い師の強引な態度に押され、ドナは思わずテントの中に入ってしまう。だがこの占い師は邪悪な存在だった。鑑定を受けている間に「時間カブトムシ」がドナの背中にはいあがり、そこに停まった。その結果、彼女の過去を変えることが可能になった。

 占い師はドナをドクターに会う前の過去に戻す。そのときドナは車で仕事の面接に向かう途中だった。右に曲がったら、仕事は退屈だが高給で安定した職に就くことができる。左に曲がったら別の会社に就職し、ドクターに会うことになる。本来ならドナは左に曲がるはずだったのだが、占い師の誘導で右に曲がってしまった。その後、事態は急速に悪化し、悪夢のような様相を呈していく……。


 あらすじをお読みになればおわかりのとおり、これは思いっきりタイムトラベルしている物語です。左折するか、右折するかで、ドナの運命が過激に変わってしまうのですが、変わるのは彼女の運命だけではありません。その影響がどんどん広がっていき、最後には地球規模の危機に発展してしまうのです。どうしたらこの絶望的な状況から抜け出し、元に戻すことができるか、というのがこの物語の見所です。

 脚本を書いたのは、最近引退を表明したプロデューサーのラッセル・T・デイヴィス。彼の作品は軽妙なジョークをちりばめた面白怖い物語が多いのですが、今回はフィナーレが近いこともあり、全編を通して脅迫感たっぷりのシリアスな物語になりました。最後まで息をつかせない展開はイギリスのファンの間で大うけで、多数の人々から絶賛されました。

 また今回から、シリーズ1と2のコンパニオン、ローズ(ビリー・パイパー)が復帰します。シリーズ2の終わりで彼女はパラレル・ユニバースに行き、ドクターから完全に遮断されてしまいました。それなのに、どうしてこちらの世界にやってこられたのでしょう?そのあたりの疑問もうまく説明されています。


12.盗まれた地球 (2008年06月28日放送)
13.旅の終わり (2008年07月05日放送)

脚本:ラッセル・T・デイヴィス
監督:グレーム・ハーパー



 前回、地球に大きな危険が迫っていることを知ったドクターとドナはターディスで地球に帰ってくる。だが時すでに遅し。地球は他の26の惑星と一緒に宇宙の遠隔地に移されていた。距離的に移されたのみならず、時間の枠からもはずされていた。その裏にはドクターの仇敵、ダレックの陰謀があった。それだけではない。今回はダレックを作り出したダヴロスが陰で糸を引いていた……。


 シリーズ4フィナーレでは元コンパニオンのローズとマーサが重要な役を務めたほか、『ドクター・フー』のスピンオフシリーズ、『
トーチウッド』と『サラ・ジェーン・アドベンチャー』の面々も出演したので、その盛り上がりぶりは尋常ではありませんでした。

   これだけ出演者が多いと、一歩間違えばストーリーの焦点が合わず、収拾がつかなくなってしまう恐れがありますが、そこはベテランの脚本家、ラッセル・T・デイヴィスさんのこと、多数のキャラクターをそつなくまとめあげ、緊迫感と興奮に満ちた物語が展開しました。

 最終回『旅の終わり』の放映時間は通常の45分から65分に拡大されました。フィナーレにふさわしく、物語のスケールはとてつもなくでっかく、プロットはどんでん返しの連続で、音楽もドラマチックでした。パラレル・ユニバースからやってきたローズの運命についても、納得のいく結果が出されました。

 そして最後に、強く心に訴えかける哀しく感動的なシーンがあり、イギリスのファンの間で話題になっていました。あまり詳しく書くとネタバレになってしまうので、これ以上は書きません。

 これをもって『ドクター・フー』シリーズ4は大団円を迎えました。来年はお休みとなり、2010年にシリーズ5の放映が再開します。でも、それまでの間に4本の一時間枠の特番が放映されることになっています。


 『ドクター・フー』シリーズ4のコンプリート・ボックスセットは11月3日にイギリスで発売になります。→イギリスのアマゾンでこのボックスセットを予約する。


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