コンタクト 科学ゾーン 読書ゾーン 実話ゾーン ホームページ

■ドクター・フー特番 火星の水

この記事にはネタバレが含まれていますのでご了承ください。

11月15日(日)、イギリスのBBCで午後7時から8時まで『火星の水』が放送された。

時は2059年、ドクターは火星に到着する。このころ、地球では環境破壊が進んでいたので、人類は史上初の試みとして火星に基地を建設し、植民地化を目指して国際的なスタッフが日々作業に励んでいた。彼らは生活用水を確保するために火星の氷を溶かして利用することにする。この水はちゃんとろ過したはずだったのだが、実はウイルスに侵されていた。この水に少しでも接触した人間はウイルスにのっとられ、おぞましいゾンビに変身、基地にいる人々を襲い始める。彼らの目的は「水の惑星」地球を征服することだった!

大人気のデイヴィッド・テナントが演じる10代目ドクターのシリーズは、この回を含み、残すところ3作となった。このエピソードは「ドクター・フー史上、最もダークで怖い物語」という触れ込みだったので、心して臨んだのだが、しょせんは午後7時から放送される家族向けドラマなので、あまり陰惨にならないよう配慮されたようだ。最近のSF作品は照明を暗めにし、セットをわざと「汚く」見せることによって、ダークでエッヂィな雰囲気を演出しようとしているように見受けられるが、『火星の水』の場合、照明は明るく、基地の内部もクリーン。それだけでもかなり印象が違う。その上、「ガジット、ガジット」が口癖のロボットが登場、愛嬌を振りまき、救いようのない悲劇に軽さと明るさを加えた。緊迫感と怖さの点では、シリーズ4の傑作『ミッドナイト』のほうが勝っていると思う。

そうはいっても、ウイルスに侵された「水ゾンビ」はかなりの迫力だ。黒目が収縮し、口の周りは乾いてひび割れ、不気味な微笑を浮かべた口からは、ひっきりなしに水が流れ出てくる。これは今まで見たことのない独創的なイメージで、衝撃を受けた。

それ以上に衝撃的だったのは他ならぬドクター自身であった。「最後のタイムロード」としての孤独に圧倒されたドクターは、取り違えたヒロイズムとエゴに惑わされ、「してはならないこと」をしてしまう。その結果、悲劇は更なる悲劇を呼ぶ。自分のパワーに酔いしれたドクターが「タイムロード大勝利。時間の法則は僕のものだ」と豪語する場面はショッキングで悲しい。ここでテナントは卓越した演技力を見せる。

かくして「10代目ドクターの最期」への布石が打たれた。

ところで、このエピソードについては、興味深い余話がある。同時期にアメリカで放送された『スターゲート ユニバース』のエピソード、『タイム』とプロットがよく似ているのだ。両方のドラマとも、生活水を確保するために惑星の氷を切り出してくる。その氷は事前にウイルス検査され、更に念には念を入れてろ過したのだが、それでも微小なウイルスが紛れ込んでいた。そして水を飲んだ人はウイルスにやられてしまうのである。このエピソードが放送されたのは11月15日。『タイム』が放送されたのは11月13日。似たような物語が同じころに放送されたのは驚きである!


ドクターフーホームページ | シリーズ1 |  |  |  | 2009年特番 |  | ニュース