ミチオ・カク博士:タイムトラベルは可能か?
このページではミチオ・カク博士へのインタビューをご紹介しています。インタビューは英語ですが、下に日本語の訳をつけておきました。
ほとんどの人はタイムトラベルがありえないと考えています。信じられないかもしれませんが、タイムトラベルを否定する物理の法則は存在しないのです。
アイザック・ニュートンは時間を矢のようなものだと考えました。いったん矢を放ったら、矢は一直線に飛んでいきます。したがって、タイムトラベルは不可能だというのがニュートンの言い分でした。そこで登場したのがアインシュタインです。彼は時間が川のようなものだと考えました。時間は恒星の周りを曲がりくねって進む川のようなものだと考えたのです。現代の物理学者は「時間」という川に渦があると考えます。時間の川は二つの支流に分かれていて、プレッツェル(紐を結んだ形の、カリッとした塩味のビスケット↓)のように曲がっていると考えているのです。

アインシュタインはタイムトラベルに懐疑的だったのですが、彼の同僚であるクルト・ゲーデルの考えは違いました。ゲーデルは過去千年の間で最も優れた数学者の一人です。彼はアインシュタインの一般相対性理論を用いてタイムトラベルを可能にする案を発見した最初の人物です。それは1949年のことでした。宇宙が回転していて、人が宇宙の周りを一周し、出発点に戻ってきたら、そのときの時間は出発時よりも過去にさかのぼっている、というのが彼の説でした。アインシュタインはゲーデルの説に疑問を抱きました。でも彼は回顧録の中で、その点については気にしていないと述べています。なぜなら宇宙は回転しているのではなく、拡大しているからです。
それ以来、アインシュタインの理論を使ってタイムトラベルを可能にする案が文字通り何百も発見されました。無限の円柱があり、その円柱が回転しているとします。もしあなたがその円柱の周囲を回り、出発点に戻ってきたら、この場合もあなたは出発時よりも前の時間に戻ってきます。そしてあなたが生まれる前の両親に会うことができます。
もう一つの方法はワームホールです。一枚の紙に二つの点を描き、紙を折って二つの点を重ねたら、ワームホールができます。『鏡の国のアリス』の物語にはワームホールが登場します。アリスが通り抜ける鏡は空間と時間における二つの点を結ぶ近道なのです。
ただし、ここで落とし穴があります。アインシュタインの理論によれば、空間と時間をプレッツェルのように曲げるのに必要なエネルギーは、恒星が爆発するときのエネルギー(ブラックホール)に相当するのです。これだけのエネルギーを地球上で作り出すことは不可能です。
ですから、宇宙でこのエネルギーを作り出すことができるかもしれません。ひょっとしたら、エイリアンがすでにタイムマシンを作っているかもしれません。あるいは、何千年も未来の子孫がタイムトラベルの技術を習得しているかもしれません。ですから、ある日、見知らぬ女性があなたの玄関に現れ、あなたの曾曾曾曾曾曾孫だと主張しても、ドアをバタンと閉めないように。なぜなら、その女性は祖先を訪れるためにタイムマシンでやってきた、あなたの子孫かもしれませんから。