コンタクト 読書ゾーン 実話ゾーン テレビと映画ゾーン ホームページ

このページでは、イギリス人科学者のスティーブ・プレストンさんによるタイムトラベルの解説をお届けします。下記の文章はスティーブさんのサイト『サイファイ・サイエンス』で公開されているエッセーを、ご本人より許可をいただいた上で訳させていただいたものです。


■質問
僕は14歳で、タイムトラベルにとても興味を持っています。タイムトラベルの基本的な概念について、僕と同じ年頃の人でもわかるように、もう少しわかりやすく説明していただけませんか?

■答え
歴史を通じて人は時間に魅了されてきました。私たちは時の経過を計測する方法を改良し続けて今に至っています。その方法は時代を追うごとに複雑かつ正確になっています。しかしながら、時間そのものは一定していません。場所によって変わりうるのです。いったい何人の人がそのことを認識しているでしょうか?

その点を最初に指摘したのはアルバート・アインシュタインでした。彼は相対性理論の中で、「時は一定して流れる川のようなものではない」と主張しました。時間は動きや重力から影響を受けるというのです。これを「時間膨張」といいます。アインシュタインは時間と三次元の空間を切り離して考えませんでした。むしろ時間と空間はつながっていて、四次元体を形成すると唱えたのです。この四次元体を「時空連続体」と呼びます。

アインシュタインの相対性理論は数々の実験によって証明されました。1971年に行われた実験はその一つです。

この実験では、極めて正確に時を刻む二つの原子時計が二機の高速飛行機にそれぞれ乗せられました。三つ目の原子時計は飛行場に置かれました。この飛行場に置かれた時計は同じ場所にとどまっていたものの、静止していたわけではありません。なぜなら、地球は自転しているからです。時計は地球の自転速度と同じ速さで移動していたのです。

さて、一つの飛行機は飛行場から東に向かって飛行しました。地球の自転方向と同じ方向に飛行したのです。したがって、この飛行機は地上の時計よりも速く移動したことになります。

もう一つの飛行機は西に向かって飛行しましたので、地上の時計よりも飛行時間は遅かったのです。

飛行終了後、東に向かった飛行機に乗せられていた時計は地上の時計よりも遅れていました。それに対して、西に向かった飛行機の時計は地上の時計よりも進んでいました。驚くべきことですね!

特殊相対性理論において一定しているものは二つしかありません。一つは観測者間の相対的な速度。もう一つは光の速度が常に秒速30万キロだということです。この理論からどんな結論が導かれるかというと、より速く進む観測者にとって時間の経過は変化するということです。時間のみならず、距離や質量も変化します。

1915年にアインシュタインは相対性理論を編み出しました。その中で彼は加速された物体について考察しました。アインシュタインは加速と重力を比較し、両者の区別がつかないことを発見したのです。

たとえば、発射前のロケットの中にいる宇宙飛行士は重力によって床に押さえられます。このロケットが宇宙に出たら重力はなくなりますが、ロケットが加速していたら、宇宙飛行士はここでも床に押さえられる感覚を体験するでしょう。エンジンを作動することによって起こる加速が重力による加速と等しかったら、宇宙飛行士は窓から外を覗かない限り、ロケットが発射台に位置しているのか、宇宙を飛行しているのか、区別がつかないでしょう。たとえロケットが三次元空間で静止していても、四次元の時空連続体においてロケットは世界線に沿って移動しているのです。

この時空連続体移動から何が結論づけられるかというと、重力もまた時間を遅くする働きがあるということです。この概念は現在知られている中で最も強い重力場……ブラックホールの内部について考えると重要性を帯びてきます。

ブラックホールとは、自身の使用済み燃料の重さに耐えかねて崩壊した死にゆく恒星のことです。その重力場があまりにも強いので、光でさえその引力から逃れられません。ブラックホールの端はイベント・ホライゾン(事象の地平線)と呼ばれます。なぜなら、そこで光が逃げられなくなるからです。そのような力に比べたら、地球の重力圏からの脱出速度など高が知れています。

宇宙船が地球の重力圏から脱出するために必要な速度はわずか秒速11.2キロメートルです。ブラックホールの端(イベント・ホライゾン)が近づくに連れ、時間の経過は遅くなります。一部の科学者は、イベント・ホライゾンの中に入った物体がことごとく次元のない超密度の物体に崩壊すると信じています。これを特異点と呼びます。

しかしながら、一部の科学者は、そのような崩壊は起こらないと主張します。しからば、ブラックホールは基本的に時空の裂け目ではなく、ドーナツの穴のようなものだということになります。この二番目の理論は、ブラックホールを利用して時空連続体のトンネル(ワームホール)を通り、宇宙の他の場所に移動する可能性を切り開きます。ワームホールに入った旅行者は近道をして、宇宙の他の場所に出られるのです。

アインシュタインの相対性理論によれば、ワームホールは空間を通り抜けるトンネルのみならず、時間を通り抜けるトンネルにもなりうるそうです。相対性理論は原則として実用的なタイムマシンを作る可能性を認めているのです。しかし、タイムトラベルするためにはブラックホールを作り、それを操作しなければなりません。それは現代の科学技術をもってしては到底できないのです。ですから人類がタイムマシンを作れるようになるのは何百年といわず何千年も先のことになるでしょう。

私は個人的に時間が直線的なものではないと信じています。時間は一方に流れるというより、循環していると思うのです。東洋の思想によりますと、宇宙では誕生と死のサイクルが続いているそうです。複雑な公式を分析した結果、私は宇宙が循環していると信じるようになりました。そこで時間は前に進むのみならず、逆行しています。言い換えれば、人は誰も何度も何度も生き直していると思うのです。