バス停の女

これは20年ほど前に起きたできごとです。当時、私は11歳でした。

ある夏の夕方、私は母と一緒に近所の店に向かって歩いていました。家から店までは徒歩で10分かかり、その途中にバス停がありました。

この日、バス停のところに女性が立っており、手を上げて運転手に合図をしたのですが、バスは停まることなく走り去ってしまいました。

そんな中、私たちがバス停のそばを通り過ぎようとした時、女性が母の方を見て、「運転手さんは私の姿が見えたのかしら?」と尋ねました。

母は奇妙な質問をされて、ちょっとショックを受け、「分かりません。見えなかったのでしょう」ときまり悪そうに応えました。

それから三歩ほど歩き、母と私は後ろを振り返りました。彼女はいませんでした。

当初のショックが治まってから、私たちは歩を速めました。一刻も早く不気味な状況から遠ざかりたかったのです。どのようにして彼女が消えうせたのか、つじつまを合わせようとしたのですが、彼女が角を曲がったり、家に入ったり、車に乗って走り去ったりする時間はまったくありませんでした。

今日に至るまで、このできごとを思い出すたびに背筋が寒くなります。