●刑事がタイムトラベルできたら……?
そんなエキサイティングな発想の下に生まれたSFミステリーがBBC(イギリス国営放送)で1997年に放映されたドラマシリーズ『クライム・トラベラー』です。この番組、放映当時の最高視聴者数は800万人を記録し、大ヒット作となりましたが、残念なことにわずか1シリーズでキャンセルされてしまいました。新年度の番組改編時にBBCのコントローラーが替わり、この番組が見過ごされたのがその原因とされています。結果的に全部で8つのエピソードしか作られませんでした。大きな可能性を宿したシリーズだっただけに、返す返すも残念です!
●人気作家が脚本を執筆!
このドラマを作ったのはイギリス人作家のアンソニー・ホロウィッツ。彼は次のように語ります。「このドラマは純粋な娯楽作品であり、視聴者の皆さんに楽しんでいただくために作りました。推理小説で刑事や探偵が事件の謎を解く際、事件発生時の模様を振り返りますよね。その際、刑事が実際にタイムトラベルして過去に戻れたらどうなるだろう?という発想の下に生まれたのがこのドラマです。要するに、事件が起こる前に刑事が事件を解決してしまうわけですね。」
ホロウィッツさんは12歳のとき、すでに作家になることを決意、22歳で出版社と契約を結び、24歳になるころにはハリウッドの気鋭の脚本家として活躍していました。現在、彼はイギリスを本拠地とし、『ポワロ
』や『フォイルの戦争
』といった推理ドラマの脚本を手がけています。小説『女王陛下の少年スパイ!アレックス』のシリーズはベストセラーになっています。このシリーズは邦訳されており、『スケルトンキー
』や『スコルピア
』といった作品が発売中です。ぜひご一読ください!
●ドラマの概要
このドラマの主人公はジェフ・スレイド刑事(マイケル・フレンチ)と犯罪科学の専門家ホリー・ターナー(クロエ・アネット)。ホリーの父親は量子物理学者で、タイムマシンの発明者です。ところが父親は「時間の輪」にはまり、行方不明になってしまいました。それでこのタイムマシンは彼女が引き継いで所有することになったのです。
このタイムマシンには数々の制限があります。まず、過去にしか行けないということ。なぜなら「未来はまだ起こっていない」からです。また、過去を変えることはできません。無理に過去を変えようとすると、何らかの妨害が起こります。あと、タイムトラベラーは過去の自分に面と向かって会うことができません。もし会ったら、とんでもない事態になると予想されています。更に、タイムトラベラーはタイムトラベルを始めた時点までに、タイムマシンがある場所に戻ってこなければなりません。さもないと「時間の輪」に捕らえられ、同じ時間帯を何度も何度も繰り返す羽目になってしまうのです。
このように数々の束縛要因があるため、物語の展開は複雑を極めます。タイムトラベルものに特有の「頭をひねるパズルのような面白さ」を楽しめるわけです。「あー、あの場面はこういう意味があったのか!」と後から納得したり……。ドキドキハラハラの展開の末、意外な結末が待ち構えていることもしばしば。SFの醍醐味とミステリーの楽しみを同時に味わえる、すばらしいドラマです!
●エピソード・ガイド(かっこ内はイギリスでの放映日です。)
1.ジェフ・スレイドと無限の輪(1997年3月1日放送)
張り込み中、ジェフが上司の命令にさからったせいで、解決目前だった事件は迷宮入りし、ジェフは解雇を申し渡される。ひそかにジェフに好意を抱いているホリーは、タイムマシンを使って事件を解決することを彼に提案する。
2.親戚の死(3月8日)
ホリーの富裕な叔母が高級レストランで毒殺される。ワイングラスに毒薬が入っていたのだ。叔母はホリーに遺産金を残していたので、彼女は複雑な心境である。ジェフとホリーは事件を解明するため過去にタイムトラベルするが、現代に戻ってきたとき、とんでもない事態になっていた。なんとふたりが第一容疑者になっていたのだ!
3.ファッションデザイナーの死(3月15日)
有名なファッションデザイナーが殺人の脅迫状を受け取る。警察は総出で彼女の保護にあたるが、それにもかかわらず彼女はファッションショーのステージ上で無残に銃殺されてしまう。ところが……。
4.時間の復讐(3月22日)
ジェフが犯罪者に撃たれ、病院に運び込まれる。絶望したホリーは過去にさかのぼり、銃撃を阻止しようとする。過去を変えてはいけないことは彼女が一番よく知っているのに……。
5.父の罪(3月29日)
警察の金庫に保管してあった密輸ダイヤモンドが何者かによって盗まれ、ジェフに嫌疑がかけられる。奇妙なことに、元刑事であるジェフの父親も5年前に濡れ衣を着せられ、現在監獄暮らしの身である。父親と自分自身の無実を証明するため、ジェフはホリーと共に過去にタイムトラベルする。
6.大臣の死(4月5日)
ホリーはジェフにタイムマシンの使用を禁じる。「タイムマシンに頼りすぎるのはよくない。普通の捜査方法で事件は十分に解決できる」というのが彼女の言い分だ。ジェフは彼女の忠告などお構いなしでタイムマシンを無断で使い、とんでもないトラブルに巻き込まれる。
7.宝くじ実験(4月12日)
タイムマシンのメンテナンス費用がかさむため、ジェフは宝くじで大もうけすることを思いつく。ところが……。
これは作者のホロウィッツさんが最もお気に入りだというエピソード。タイムトラベルというと、まず思いつくのが宝くじで大もうけすることですよね(過去に行って当選番号を過去の自分に教えるか、もしくは未来に行って当選番号を調べるか)。果たしてジェフの「いかさま」は成功するのでしょうか……?
8.壊れたクリスタル(4月19日)
ホリーの昔のボーイフレンドが戻ってきて、ジェフは嫉妬する。ところがそこで新たな問題が。タイムマシンの重要な部品であるクリスタルが壊れてしまったのだ。そこでホリーは仕方なく「第二のタイムマシン」を製作することに……。
シリーズフィナーレとなった本エピソードでは二台のタイムマシンが使われるため、ただでさえ複雑な筋が更に複雑になり、脚本の執筆は困難を極めたそう。執筆が終了したとき、ホロウィッツさんは疲労困憊していたそうです!
『クライム・トラベラー』の日本語版DVDは発売されていないようです。英語版でしたらイギリスのアマゾンで注文できます。このコンプリート・ボックス・セットには上記でご紹介した8エピソードが4枚のディスクにすべて収録されています。映像特典として、作者アンソニー・ホロウィッツへの詳細なインタビューが収録されています!→
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