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 このページでは、1963年にイギリスのBBCで放映された『ドクター・フー』シリーズ1のエピソードをご紹介します。エピソードのタイトルは英語のタイトルを私が適当に訳したものですのでご了承ください。放送年月日はイギリスでの放映日です。

 初期の『ドクター・フー』は一回あたりの放送時間が約25分で、続き物になっていました。4回から7回で一つの物語が完結するようになっていました。そして一つ一つの回に題がつけられていました。


1.地球外から来た子供

脚本:アンソニー・コバーン、C.E.ウェバー
監督:ワリス・フセイン


1.地球外から来た子供:1963年11月23日
2.頭蓋骨の洞窟:1963年11月30日
3.恐怖の森:1963年12月7日
4.火を作る者:1964年12月14日

 高校教師のイアンとバーバラにとって、スーザンは謎に満ちた生徒である。普通の生徒では知らないような知識をたくさん持っているのだ。そうかと思うと、基本的な一般常識を知らなかったりする。そこで二人は学校が終わった後、スーザンを尾行する。驚いたことに、彼女はゴミ捨て場に姿を消した。そのゴミ捨て場には警察用の公衆電話ボックスがあり、奇妙な老人がいた。その老人はスーザンの祖父で、自分をドクターと名乗った。

 電話ボックスの中に足を踏み入れたイアンとバーバラは驚愕する。中は広々としており、中心部に奇妙な操作台が設置してあったからだ。公衆電話ボックスと思われたものはターディス……時空を駆け巡るタイムマシンだった。ドクターとスーザンは故郷の惑星を逃れ、時空をさまようエイリアンだったのだ!二人の教師に正体を明かされることを恐れたドクターはターディスを起動、四人は時空間を突き進んでいく。しかもイアンとバーバラはドクターからとんでもないことを知らされる。ターディスには欠陥があり、目的地を指定できないというのだ。行き先と到着時間は成り行き任せだという。かくして二人の教師はドクターとスーザンと共に時空をさまよう冒険者になった。四人が最初に到着したのは原始時代だった。そこで一行は洞窟に住む原始人たちによって囚われの身となってしまう……。


 記念すべき第一回では、ドクターとスーザン、そしてイアンとバーバラの出会いが描かれます。二回目以降で、一行は紀元前10万年の石器時代に!このころ、原始人たちは火を作る秘密を探ろうとしていました。そこに現れたドクターがマッチでパイプに火をつけたため、四人は原始人たちによって捕らえられ、洞窟の中で囚われの身となってしまうのです。

 正直なところ、原始時代の部分は地味で退屈という印象を受けました。でも「ここからすべてが始まった」という意味で、意義深い作品だと思います。


 この作品の日本語版DVDは発売されていないようです。英語版は下記の二作品と一緒にボックスセットになっています。→アマゾンでこのDVDを買う。


2.ザ・ダレックス

脚本:テリー・ネイション
監督:クリストファー・バリー、リチャード・マーティン


1.死の惑星:1963年12月21日
2.生存者:1963年12月28日
3.逃亡:1964年1月4日
4.待ち伏せ攻撃:1964年1月11日
5.遠征:1964年1月18日
6.試練:1964年1月25日
7.救出:1964年2月1日


 ドクターと三人のコンパニオンはスカロ星に到着する。この惑星の住民は二手に分かれていた。一つの種はダレック……敵意に満ちた突然変異種で、ロボットを思わせる移動可能な機械の中に入り、我が身を保護している。もう一つの種は人間に似た美しいサールである。ダレックは核兵器でサールを攻撃しようとしていた。サールは平和主義者なので、戦争に関わることにためらいを感じている。だがドクターは全滅の危機を避けるため、ダレックと戦う必要性をサールに説くのだった……。


 この物語では『ドクター』で一番人気の悪役、ダレックが初お目見えしました。最初の原始時代の物語はかなり好評だったそうですが、この『ザ・ダレック』は視聴者の心をしっかりとらえ、人気が爆発したそうです。本国イギリスにおける最後二回の視聴者数は実に一千万人以上!1963年にこれだけの視聴者数を獲得したのはスゴイことだと思います。

 『ザ・ダレック』の脚本を書いたテリー・ネイションさんは1930年の生まれ。彼が8歳のとき第二次大戦が勃発しました。ナチスと広島・長崎の原爆投下の時代を生きた同氏は、そのときの恐怖をこの『ダレック』に投影したのだそうです。ダレックの有名な口癖、「エクスタ〜ミネイト!エクスタ〜ミネイト!」(皆殺しにせよ!皆殺しにせよ!)は、そんな背景から生まれたのかもしれませんね。ともかく、この『ザ・ダレック』をもって『ドクター・フー』は不動の地位を確立、40年以上の時を経た今でも世界中の人々から支持される伝説的なドラマになったのです。

 なお、この物語は大ヒットとなったので、ピーター・カッシングの主演により映画化されました。映画の詳細はここをクリック!


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3.破滅寸前

脚本:デイヴィッド・ウィテイカー
監督:リチャード・マーティン、フランク・コックス


1.破滅寸前:1964年2月8日

 スカロ星をあとにし、地球に向かうターディスに異変が生じ、四人の乗組員は全員気を失ってしまう。

 四人は薄暗いターディスの中で気を取り戻す。ドクターは額に傷を負っており、残りの三人は部分的に記憶を失い、頭や首に痛みがあった。しかも、ターディスの扉が勝手に開いたり閉まったり、時計が溶けたり、スクリーンに意味不明の映像が映し出されたりと、奇妙なできごとが起こり始めた。果たしてこの不可解な事件の真相は?


 この物語は二部構成で、25分のエピソードが二本で完結するのですが、面白い裏話があります。シリーズ1を編集していく過程で、エピソード二本分の空きができてしまったのだそうです。どうしてもこの空きを埋めなければいけないが、予算は限られている。他の俳優を雇ったり、セットを作ったりする余裕はない。そこで苦肉の策として、登場人物を四人に限定し、舞台をターディス内に限って、脚本を書いたのだそうです。いわば急場しのぎの穴埋め的な物語だったわけです。

 そんな事情を前もって聞いていたので、見る前は「さぞかし退屈なドラマに違いない」と高をくくっていたのです。でも、いざ見てみたら、これが意外に面白い。ターディスの中で不可解な事件が続出したり、四人の登場人物がお互いを疑って人間関係が緊張したりするので、サスペンスがたっぷり。結末は完全に意表を突かれました。お金がなくても、アイデア一つで面白いドラマはできるのだと感心した次第です。

 『(新)ドクター・フー』では、ターディスが単なる乗り物にとどまらず、独自の知性を持った一種の機械生命体として描かれています。そんな設定のきっかけを作ったのが、この『破滅寸前』です。


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4.マルコ・ポーロ

脚本:ジョン・ルカロッティ
監督:ワリス・フセイン、ジョン・クロケット


1.世界の屋根:1964年2月22日
2.歌う砂:1964年2月29日
3.五百の目:1964年3月7日
4.嘘の壁:1964年3月14日
5.上都からの騎手:1964年3月21日
6.強大なるクビライ・カン:1964年3月28日
7.北京の刺客:1964年4月4日


 ドクターと三人の仲間は雪原に到着する。ところがそこで災難が発生!ターディスが故障し、熱源と水を絶たれてしまったのだ。このままでは四人は凍死してしまう。彼らを助けたのはベニスの旅行者、マルコ・ポーロであった。彼の話によると、時は1289年で、場所はヒマラヤ山脈だという。マルコは蒙古の兵士と中国の娘ピング・チョーを連れて、クビライ・カンに謁見するためパミール峠から北京に向かう途中だという。

 マルコはターディスが「空飛ぶキャラバン」だと知り、ドクターからターディスを奪って、クビライ・カンに献上することを勝手に決意する。その功績によって、ベニスに帰る許可をもらおうという魂胆である。ドクターたちはなす術もなく、マルコのキャラバンに加わり、旅をする羽目になる。一行はゴビ砂漠を渡り、敦煌千仏洞に立ち寄り、万里の長城をたどって上都から北京へと至る大冒険の旅に出発する。行く手には数々の危険が待ち受けていた……。


 これは『ドクター』の歴史ものの中で最高傑作といわれています。中国に行ってロケする予算はなかったものの、衣装やセットで当時の中国を再現、文化的に価値のある作品だからです。残念なことに、この作品はテープがすべて消去されてしまったので、今は存在しません。


 上記で説明したとおり、この作品は消去されてしまいましたが、スチル写真と音声を元に復元した30分のダイジェスト版は上記のボックスセットに特典映像として含まれています。→アマゾンでこのDVDを買う。


5.マリナスの鍵

脚本:テリー・ネイション
監督:ジョン・ゴリー


1.死の海:1964年4月11日
2.ベルベットの網:1964年4月18日
3.叫ぶジャングル:1964年4月25日
4.恐怖の雪原:1964年5月2日
5.死刑宣告:1964年5月9日
6.マリナスの鍵:1964年5月16日


 ドクターと彼の孫娘スーザン、そしてイアンとスーザンはマリナス星に到着する。この星では凶暴な種族をマインド・コントロールによって管理するため、「マリナスの良心」と名づけられたコンピュータが使われていた。ところが、このコンピュータを動かす四つの鍵が失われ、凶暴な種族が暴れだしたので、マリナス星は危機的な状況にあった。そこで科学者のアービタンは苦肉の策としてターディスの周りにバリアを張り、ドクターたちをターディスから締め出してしまう。四つの鍵を探し出さない限り、バリアを取り除かないというのだ。かくして四人は鍵を求めて危険な旅に出発する羽目に……。


 これは面白い!楽しみました。一回25分で物語が完結するようになっており、それらの小さな章が集まって一つの大きな物語が完成する構成になっています。

 腕時計型のテレポート機を使って、マリナス星をあちこち駆け巡り、鍵を探すのです。行き先は熱帯のジャングルから厳寒の雪原まで様々。ジャングルでは殺人植物が主人公たちに襲いかかり、雪原では凍結していた戦士が動き出したりと、スリル満点の物語が展開。毎回舞台が変わり、快調なテンポで物語が進むので、退屈しません。スタッフは数多くのセットを作らなければならなかったので、その分お金もかかったことでしょう。

 それと、科学の先生、イアンが背中に鶴の紋章がついた法被(はっぴ)を着て大活躍!ほほえましかったです。これは前の物語『マルコ・ポーロ』で中国から持ち帰ったおみやげなのでしょう。中国服というより和服?


 この作品はDVD化されていません。


6.アステカ

脚本:ジョン・ルカロッティ
監督:ジョン・クロケット


1.悪の寺院:1964年5月23日
2.死の戦士:1964年5月30日
3.犠牲の花嫁:1964年6月6日
4.暗闇の日:1964年6月13日

 ドクターとコンパニオンは1430年のメキシコに到着する。そこでバーバラはアステカ人によって高僧の生まれ変わりだと勘違いされる。生き神様に祭り上げられたバーバラは自分の地位を利用して残酷な人身御供の風習をやめさせようとする。ドクターはバーバラに「歴史を変えるべきではない」と忠告するが、彼女は聞く耳を持たない。一方、イアンはアステカの屈強な戦士と決闘する羽目になり、スーザンは人身御供の犠牲者と結婚することを命じられる。逃げたくても、ターディスは高僧の墓に閉じ込められているのでアクセス不可能。果たして四人の運命やいかに?


 これは歴史ものの第三弾にあたります。質の高いドラマとして、ファンの間で高く評価されています。それもそのはず、脚本を担当したジョン・ルカロッティはアステカ文明の調査のためにかなりの時間を費やしたそうです。

 当時アステカでは人身御供の心臓を太陽に捧げるという恐ろしい習慣がありました。バーバラは生き神様の地位を利用してその習慣を無理にやめさせようとするのですが、アステカの人々から反感を買い、危機的な状況になります。ドクターの言うとおり、過去にちょっかいを出してはいけないということですね。これはタイムトラベルのドラマでよく取り上げられるテーマです。

 また、当時のアステカでは、異性にココアを作ってあげることはプロポーズすることを意味したそうです。そうとは知らないドクターが年配の女性にココアを作ってあげたばっかりに、女性はプロポーズされたと勘違いし、有頂天になるという笑える一幕もありました。


 この作品は英語版のDVDが発売されています。→アマゾンでこのDVDを買う。


7.センソライツ

脚本:ピーター・ニューマン
監督:マーヴィン・ピンフィールド、フランク・コックス


1.宇宙の異邦人:1964年6月20日
2.気の進まない戦士:1964年6月27日
3.隠された危険:1964年7月11日
4.死との競争:1964年7月18日
5.誘拐:1964年7月25日
6.必死の冒険:1964年8月1日

 ターディスは28世紀の宇宙船内に到着する。船内には三人の宇宙飛行士がいたが、全員死んでいるように見えた。ところが突然彼らは息を吹き返す。船長の説明によると、三人は「センソライツ」と呼ばれる、テレパシー能力を持つ宇宙人の影響下にあるという。宇宙人のテレパシーによって、トランス状態にされてしまうというのだ。三人のうち一人は錯乱状態にあった。

 そうこうしているうちに、ドクターの孫娘にあたるスーザンがセンソライツからテレパシーで連絡を受ける。彼らのリーダーが話し合いの機会を持ちたいというのだ。そこでドクターたちは彼らの惑星「センソ・スフィア」に赴くのだが……。


 この物語はファンの間ではシリーズ1の中で最も面白くないと評価されているようです。確かにペースはやや遅め。でも退屈してしまうほどではありません。私は十分に面白いと思いました。予算が限られているにもかかわらず、28世紀の宇宙船やエイリアンの社会を描くことに挑戦した、製作者の意気込みとチャレンジ精神は見上げたものだと思います。

 エイリアンの特殊メークには目を見張りました。もちろん、現代の技術には到底およびません。でも当時としては上出来だと思います。特殊メークが優れているせいで、センソライツはかなり不気味で脅迫感があります。でも、物語が進むにつれ、彼らは必ずしも悪者ではないことが明らかになります。むしろ非は地球人にあったのです。なぜ地球人が彼らの惑星にやってきたかというと、この星にある貴重な鉱石を横取りするためだったのです。宇宙飛行士がテレパシーでトランス状態にされたのは、そんな理由があったからです。

 このように、『センソライツ』は人間=善、エイリアン=悪の勧善懲悪ものではありません。『ドクター・フー』はひとつひとつの物語に個性があり、バラエティーに富んでいます。ワンパタに陥ることがないので、飽きることがありません。その辺も「世界で最も長く放映されているSFドラマ」になった理由なのかもしれません。


 この作品はDVD化されていません。


8.恐怖政治

脚本:デニス・スプーナー
監督:ヘンリック・ハーシュ、ジョン・ゴリー


1.恐怖の土地:1964年8月8日
2.マダム・ギロチンの客:1964年8月15日
3.身分のすり替え:1964年8月22日
4.フランスの暴君:1964年8月29日
5.必要に迫られた交渉:1964年9月5日
6.コンシエルジュリー監獄の囚人:1964年9月12日

 ターディスはフランス革命が盛り上がっていた1794年のパリに到着する。イアン、バーバラとスーザンは兵士に捕らえられ、監獄に送られて、ギロチン刑を言い渡される。捕獲を免れたドクターは地方高官に成りすまし、三人を救うためパリに向かうのだが……。


 シリーズ1はこの『恐怖政治』をもって終了します。初期の『ドクター』ではSFものと歴史ものを交互に放映していたのですが、今回は歴史もので、フランス革命が舞台です。

 この物語は歴史的な事実とフィクションを巧みにミックスしてあり、少しだけですが笑わせる場面もあるので、結構おもしろく見ることができました。ナポレオンやロベスピエールも登場、歴史の勉強になります。タイムトラベルして過去に行くことができたら、歴史的に重要な事件を自分の目で見たいと思いますよね。『ドクター・フー』の歴史ものは、そんな願望を追体験でかなえてくれます。

 シーズン1の最後は「私たちの運命は星の彼方にある。一緒に運命を探しに行こうじゃないか」というドクターのちょっぴり感傷的な言葉と共に終わります。そして、この後に続くシーズン2は1よりも更に面白さが増していきます。


 この作品は4番目と5番目のエピソードが消去されてしまったので、DVDは発売されていません。


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