これはアメリカのウィスコンシン州に在住の女性 TI さんの体験談です。


ある日、私は友達のボブと一緒にバンドのコンサートに出かけました。その会場は私の住む町から車で一時間ほどのところにありました。演奏が終わったあと、私たちはバンドの人たちと話をして、帰途につきました。

その夜は新月だったので、月光はなく、街灯もなかったので、あたりは真っ暗でした。光源は夜空の星々と車のヘッドライトだけでした。

車を走らせているうちに、私はトイレに行きたくなりました。でも、あたりに公衆トイレはまったくありませんでした。私は杖を常用しているので、雑木林の中で用をたすわけにもいかず、私たちは公衆トイレを探しながら、ひたすら車を走らせ続けました。

高速道路を出て、自宅から30分ほどのところにさしかかったころでしょうか。突然、暗闇の中に、ネオンサインで煌々(こうこう)と照らされたサロン・バーが現れました。その時の時間は午前3時ごろでした。普通、バーは午前2時には店を閉めるのに、なぜかこの店はこの時間になっても営業していたのです。

友達のボブはそのバーに立ち寄れることを喜んでいました。なぜなら、その店は壁画があることで有名だったからです。ボブも私も芸術家のはしくれなのです。

バーの駐車場には何台かの車が停めてありました。扉を開けてバーの中に足を踏み込んだら、午前3時だというのに、そこには8〜10人の客がたむろしていました。みんな一斉に振り返り、満面の笑みを浮かべて、「やあ! お入りなさい!」と言いました。

バーテンは筋肉質のがっしりした男性で、ピチピチの白いTシャツと細身のジーンズに身を包み、カウンターに寄りかかって、ニヤニヤ笑いながら、私たちを見ていました。

スツールに座っていた若い男性が立ちあがり、にっこり微笑みながら、「さあ入って」と私たちを招き入れました。彼の歯はタバコのヤニで茶色く汚れていました。

私はボブにビールを注文するよう頼んで、トイレに直行しました。用を足したあと、手を洗っている時、妙なことに気づきました。ゴミ箱にペーパータオルが一つも捨てられていなかったのです。トイレはきれいに掃除されており、使われた形跡がありませんでした。今は午前3時で、他の客たちはおそらく午後6時か8時ごろからここにいるのでしょうに、どうしてトイレを使わないのでしょう。「閉店時刻が近づいているので、掃除をした直後なのかもしれない」……私はそんな風に自分に言い聞かせました。

私はトイレから出て、ボブと合流し、有名な壁画を見にいきました。それは西部劇のサロンを描いたものでした。その絵には、トランプで遊んでいる二人の男が描かれていたのですが、バーにもトランプ遊びをしている男性が二人いました。絵に描かれている二人と、バーにいる二人を比較したら、そっくりであることに気づきました。絵に描かれた二人はカウボーイの格好をしており、バーにいる二人は普通の服を着ていたものの、顔かたちはそっくりでした。

そこで、二人以外の人々も見比べてみたのですが、絵に描かれている人々と、バーにいる人々が、それぞれ似通っていることに気づきました。屈強なバーテンの男性は、絵の中ではカウボーイの格好をしており、部屋の隅にいました。たぶん、ここにいる人たちはバーの常連客で、彼らを西部劇のサロンの客に見立てて壁画にしたということなのでしょう。私たちはそんな風に結論づけました。

そうこうしている内に、歯の汚れた若い男性がジュークボックスに行って音楽をかけました。それは旧式のジュークボックスで、中にはEPのレコードが入っていました。

彼がかけた曲は、チャビー・チェッカーが1960年にリリースしたシングル『ザ・ツイスト』でした。彼は私の方に歩いてきて、「踊らない?」と誘いをかけてきました。でも、彼の体臭が鼻をついたので、「ごめんなさい。足が悪いから踊れないの」とお断りしました。

私たちは二杯目のビールを注文したのですが、人々は私たちに話しかけてくることもなければ、お互いにおしゃべりすることもなく、いたって無口でした。

壁画のことをもっと知りたかったので、「この絵は誰が描いたのですか? ここに描かれている人たちはあなたたちがモデルなのですか?」と尋ねたのですが、彼らはただ微笑んで、うなずくばかりでした。

ビールも残り少なくなったので、私たちはまた壁画のところに行って、絵を観賞することにしました。その絵の真ん中あたりに、西部劇のサロンでよく見かける旧式のスイングドアがあったのですが、そこに二人の人影があることに気づきました。それらの人影は、最初に見た時、そこにありませんでした。

やがてその人影に色がにじみ出てきて、姿形を判別できるようになりました。驚いたことに、そこに現れつつある二人は、私たちにそっくりでした! 長めのスカートをはき、杖をついた巻き髪の女性は私であり、その隣にいる男性はボブでした!

何か恐ろしいことが起きつつあることを察した私たちは、早足でバーの出口に向かいました。そうしたら客たちは、まるで「おい、どこへ行くの?」と問いかけるかのように、一斉に立ちあがりました。

扉を開き、バーの外に出たとたん、あたりは真っ暗になりました。それまで明るく輝いていたネオンサインは一瞬にして消え失せました。そして駐車場には車が一台もありませんでした。

私たちは猛スピードで車を走らせながら、「これは何? 一体何が起こったの?」と言うばかりでした。

翌日、私たちはまたそのバーに行ってみることにしました。もちろん、深夜ではなく、開店時間を見計らって行きました。壁画は依然としてそこにありました。それは前夜に見た絵と同じものでしたが、スイングドアの前に現れつつあった私たちの姿はもはやそこにありませんでした。

いかついバーテンはおらず、若い女性がそこにいました。その女性に男性のバーテンについて尋ねたところ、彼女は怪訝(けげん)な表情を浮かべて、「他のバーテンって誰のことですか?」と尋ねてきました。「がっしりした若い男性がいるでしょ?」と言ったら、彼女は「そんな人はいません。この店のバーテンは私だけです」と答えました。

ジュークボックスは依然として店内にありましたが、それは新式のもので、中にはCDが入っていました。そして『ザ・ツイスト』の曲はありませんでした。

あの夜、何が起こったのか、私は説明することができません。一種のタイムウォープだったのでしょうか? それとも霊現象だったのでしょうか? 私は幽霊屋敷で生まれ育ったので、霊に対しては敏感な方なのですが、あの夜、バーに足を踏み入れた時、霊現象に特有のもやもやした気持ちにはなりませんでした。

あの夜、もう少しあのバーにとどまっていたら、私たちは自分の世界に戻れず、行方不明になっていたかもしれません。

幸運を引き寄せる

・これ、スゴイお話ですね。まるでTVドラマみたい!怖い!本当にこんなことってあるのでしょうか?

恵理さん(2015年5月4日)

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