これはアメリカ・ジョージア州のタイラーさんの体験談です。


今、私はグラフィック・デザイナーをしているのですが、1年半ほど前までは病院の手術室の助手として働いていました。

そこは大きな病院で、手術室が23もあり、いつも同時に稼働していました。私たち助手の胸ポケットにはトランシーバーが入れてあり、医師が何か必要になったら、助手に連絡して依頼するという段取りになっていました。

ある日、昼休みが終わりに近づいたころ、私はトランシーバーで手術室に呼び出されました。手術が終わったので、患者を安静室に移動してほしいというのです。その時の時間は午後2時ごろでした。

私は指定された手術室に向かいました。手術が終わった患者を手術室から安静室に移動することは、助手に与えられた主要な仕事の一つなのです。

手術室に入り、同僚と協力として患者を担架に移そうとした、まさにその時、私の胸ポケットに入れてあったトランシーバーが鳴りました。応答したら、別の手術室で医療用ビーンバッグ(患者の姿勢を調整するための医療用具)が必要だというのです。

次の瞬間、私は向かいの病棟の廊下に立っていました。手にはビーンバッグを持っていました。前述したように、そこはとても大きな病院で、フットボールの競技場と同じくらいの広さがありました。ですから、今しがたまでいた手術室から、その廊下までは、かなりの距離がありました。私は、まるでCDが演奏中に飛んでしまったような、妙な気分を味わっていました。

そこに同僚がやってきました。私はその同僚と協力して患者を担架に移そうとしていたのです。彼は激怒しているように見えました。私は「よお! どの部屋でビーンバッグが必要なのか知ってる?」と尋ねました。

同僚は「なに訳の分からないこと言ってるんだ。誰もそんなもの頼んでいないよ」と答えました。私は「いや、今しがた連絡があったんだ。ビーンバッグが必要みたいなんだけど、どの手術室で必要なのかを聞き損ねたんだ」と言いました。

その時、私は「これを届けなければいけない」という強い使命感に駆られていたのです。しかし、どこに届けたらいいのか、どうしても思い出すことができませんでした。

同僚はむかついた様子で、「あんなことするなんてひどいじゃないか!」と言いました。ゆっくりと事の次第が飲み込めてきました。私は、患者を担架に移す途中で、仕事を放棄し、手術室から出ていったようなのです。それで、同僚は看護師に頼んで患者を担架に移さなければならなかったのだそうです。手術室にいた人全員が私に腹を立てているとのことでした。

私は事情を説明し、なんとか同僚をなだめることができました。それで彼に「一体何が起こったのか教えてくれ」と尋ねました。同僚の話によると、患者を抱えて担架に移そうとしていた時、私は文字通り手を放し、前を見て、手術室から出て行ったというのです。誰もトランシーバーに連絡してこなかったのです。

同僚と話をしている時、ポケットに入れてあった携帯が鳴りました。妻から携帯メッセージが10通ぐらい届いていました。その時の時間は午後4時を過ぎていました。つまり、私は約2時間を一瞬にして失ってしまったのです。

【白井田七。茶】

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