

ある研究によると、三分の二の人々は、一生の間に少なくとも一度、デジャヴを体験するとのことです。しかし、その原因はほとんど解明されていません。
あるイギリス人男性(23歳)は「慢性的なデジャヴ」を体験しているそうです。その症状が延々と続いているので、彼は大学を中退することを余儀なくされました。そして彼は、ニュースを見たり、新聞を読むといった日常的な行為に見切りをつけました。なぜなら、「全部すでに体験ずみ」だからです。
この男性は問題から逃れるために、お気に入りの観光地に旅行に出かけたのですが、かえって旅先で症状が悪化したそうです。つまり、すでに体験ずみの旅行を再体験しているような気持ちになったということです。
この症状は、イギリスの『医療症例報告ジャーナル』に出版されたことをきっかけにして明るみに出ました。
この報告を執筆したシェフィールド・ハラム大学のクリスティーン・ウェルズ博士は次のようにコメントしています。
「普通、デジャヴというと、なじみ深い感覚を味わって不安を覚える程度のものですが、我々の患者は、なじみ深い感覚を味わうだけでなく、昔の体験を記憶から取り出しているように感じると主張しています。」
彼がこの症状を初めて体験したのは2007年のことでした。一回につき数分から数日に渡ってデジャヴを体験したといいます。
彼は2010年に再び診察を受けましたが、そのころまでに彼はテレビを見たり、ラジオを聞いたり、新聞を読んだりするのを辞めていました。なぜなら、すべて視聴ずみだと感じたからです。
この症状を研究したブルゴーニュ大学の認知神経心理学者であるクリス・ムーラン博士によると、その男性はうつ病や不安神経症を患った経歴があり、大学時代にLSD(麻薬)に手を出したそうですが、それらのことを除けば完全な健康体だそうです。
ムーラン博士はこうコメントしています。
「この男性は非常に印象深かったです。というのも、まだ若いにもかかわらず、『自分の脳がいたずらをしている』という感覚を持続的に体験し、精神的にショックを受けていたからです。」
この患者は数分、時にはそれ以上に渡り、過去に体験したできごとを再体験していると感じました。彼はその体験を心理スリラー映画『ドニー・ダーコ』にたとえています。
ムーラン博士:「一例を挙げましょう。ある日、彼は散髪に出かけました。理髪店に足を踏み入れた時、彼はデジャヴを体験しました。次に彼はデジャヴのデジャヴを体験しました。そのことで頭がいっぱいになってしまい、ほかのことを考えられなくなったといいます。」
彼は8年に渡り「タイムループに囚われている」と感じています。脳をスキャンした結果、異常は認められませんでした。そのことは、この症状が心理的なもので、神経性のものではないことを示唆しています。
世界中で何人の人々が「慢性的なデジャヴ」を体験しているかは不明です。しかし、ムーラン博士は以前にも似たような症状を持つ患者を診たことがあるそうです。何人かの患者は、博士に初めて会ったにもかかわらず、「すでに会った」と主張したそうです。
ムーラン博士:「私に会うのは初めてだったのに、まるで旧友であるかのように挨拶したんです。何人かは地球の裏側にいて、スカイプで通話しました。にもかかわらず、そんな風に感じたといいます。」
23歳のイギリス人男性の体験が新聞に報道されて以来、同じような体験をしている人々が名乗り出るようになりました。クリスティーン・ウェルズ博士は次のようにコメントしています。
「オーストラリアからアメリカに至るまで、メールを受け取りました。これは極めてまれな症例です。でも、現に慢性的なデジャヴを体験している人や、一時的にそんな体験をした人、もしくは体験者と知り合いの人は確かに存在します。」
参考記事:BBC(英国国営放送)
・俺と同じ
2015年6月21日