

ナノテクノロジーとは、物質を原子や分子のスケールにおいて、自在に制御する技術のことです。
この杯は、光に当てると、不透明な緑から透明な赤に変わる特性を持っています。なぜ色が変わるかについては、長年に渡り科学界の謎とされていました。
1990年代、このガラスに微量のコロイド金粒子と銀粒子が含まれていることを研究者が発見し、謎が解明されました。杯に光が当たると、金粒子と銀粒子の電子が振動し、色が変わることが明らかになったのです。
この杯には、リュクルゴス(古代ギリシアの国・アルカディアの王)が描かれています。激しい気性の持ち主だったリュクルゴスは、ディオニソス(ギリシア神話に登場する豊穣とブドウ酒と酩酊の神)と、巫女・アンブロージアを攻撃しました。アンブロージアは母なる大地に呼びかけ、大地は彼女をつる草に変えました。そして彼女は王の体に巻きつきました。
この杯は、王がつる草に巻かれ、身動きがとれなくなった瞬間を表しています。そしてディオニソスと、パン(牧羊神)、そしてサテュロス(牧神)がリュクルゴス王を懲らしめています。

大英博物館の話によると、二色性のガラスを使って作られた古代の工芸品の中で、完全な形で残存しているのはこの杯だけだそうです。
ローマ皇帝の伝記を集めた書物『ヒストリア・アウグスタ』には、二色ガラスで作られた二個の杯が、ハドリアヌス(第14代ローマ皇帝で五賢帝の一人)から、義理の弟・セリビアヌスに贈られたことが記録されています。ひょっとしたら、「リュクルゴスの杯」はそのうちの一つだったのかもしれません。
この贈答品には、ハドリアヌスからセリビアヌスに宛てて、こんな手紙が添えられていました。
「色が変わる杯をそなたと我が妹に進呈する。これは寺院の僧侶からもらい受けたものだ。祝宴を催す日にこれを使うがよい。」
「リュクルゴスの杯」は驚くべき工芸品です。それは製作者が極めて進んだ技術を修得していたことを証明しています。古代ローマ人はナノテクノロジーに通じていたのでしょうか? 通じていなかったのなら、その技術はどこからやってきたのでしょう……?
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・キリスト教の知識への弾圧は、文明の発展を大きく妨げるものでした。もしも、これらの技術が悪魔の技とされていなければ、非化石エネルギーや核技術の安全性など、今は現実になっていないレベルまで行きついていたかもしれません。いまごろ世界中から貧困なんて言葉がなかったかもしれません。
オッペンハイムさん(2015年9月5日)