これはあるフィンランド人男性の体験談です。このページに掲載されている風景画像は、すべてフィンランドの「アーホ・ケコーネン国立公園」のものです。

人っ子一人いない夜の国立公園で突然工事の音と人の声が……?

これは数年前に起きたできごとです。ある夏の終わりに、僕は二人の友達と連れ立って、北部のラップランドにキャンプ旅行に出かけました。このころ、蚊の季節は終り、気温は秋に向けて下がり始めていました。

僕たちは食料と用具一式を荷造りして、5日間のトレッキングに出発しました。

アーホ・ケコーネン国立公園に到着した僕たちは、ビジターセンター(国立公園や国定公園の利用案内を行っている施設)の駐車場に車を停め、大自然の中へと歩を進めていきました。

この公園はフィンランドとロシアの国境近くに位置し、2500平方キロメートルにわたって原生自然が広がっています。原野、山間地域、松やカバ(樺)の密林など、その自然は多岐にわたります。そして沼がたくさんあります。トナカイやクマに出くわすのも珍しいことではありません。オオカミの遠吠えが聞こえることもあります。

今回、僕たちは人里はるか離れた地域に足を運びました。村もなければ、街もなければ、工場もありませんでした。時おり他のハイカーたちを見かけることはありましたが、遠くに見えるのがせいぜいで、面と向かって会うことはほとんどありませんでした。

旅も中ほどまで差しかかったころ、僕たちは小さな空き地にテントを張りました。その時点ですでにあたりは暗くなっていました。夕食をとったあと、僕たちはテントの中に入り、寝袋に潜り込みました。小さなテントでしたが、何とか三人が収まるだけのスペースはありました。20代の若者の例にもれず、ジョークや下品な話題で盛り上がったあと、テントの中は次第に静かになっていきました。

眠りに落ちようとしていた時、人の話し声と機械音が聞こえてきました。人里離れたところでそんな音が聞こえるなんて、実に奇妙なことでした。近くに山小屋があったわけではありません。僕たちのほかにキャンプしている人でもいるのでしょうか? 何の話をしているのか聞き取ることはできませんでしたが、それが人の声であることは疑いがありませんでした。

しかし、機械音は説明のしようがありませんでした。それは掘削機か戦車のような爆音で、それほど遠くないところから聞こえてきました。人の声が混じっているということは、工事現場が近くにあるということでしょうか? でも、こんな時間に? 自然保護区で……?

僕たちはテントから出ました。外気は冷たく、あたりは真っ暗闇でした。キャンプファイアは完全に消えておらず、木炭が赤く輝きながらくすぶっていました。僕たちは懐中電灯を取り出しました。

声と機械音が北の方から聞こえてくることは明らかでした。500メートルぐらい先でしょうか? 少し離れたところに小高い丘があるので、その向こう側で工事をしているのかもしれません。でも、明かりは見えませんでした。

テントの外に出ても、人々が何の話をしているのかを聞き取ることはできませんでした。どの言語を話しているのかさえ分かりませんでした。でも、それが人の声であることは確かでした。エンジンのような音は、時に大きくなり、時に小さくなって、ずっと鳴り続けていました。

同行していた二人は僕よりもずっと勇気があり、謎を解明する決意を固めていました。二人は暖かい服を着て、ブーツをはき、コンパスと地図を持って、音源に向かって歩いていきました。キャンプ地に一人残った僕は、消えそうになっているたき火に薪(まき)をくべながら、二人を待つことにしました。

二人がキャンプ場を離れてから、かれこれ二時間が経ったというのに、友達は戻ってきません。「工事現場の人たちとコーヒーでも飲んでいるのだろうか?」 僕は薪をくべながら、そんなことを考えていました。当時はまだ携帯電話が普及していなかったので、連絡を取り合うことができなかったのです。

そんな中、声と音がピタリと途絶え、あたりはシンと静まり返りました。それから30分ほど待ったのですが、友達が戻ってくる気配はありません。僕は本気で心配するようになりました。迷子になったのでしょうか? 探しに行った方がいいのでしょうか? 僕は友達の名前を数回叫び、たき火を盛大に燃え上がらせました。

ビビりまくっていた時、突然懐中電灯の明かりが見えました。友達が戻ってきたのです! 二人は急いでいるように見えました。息せき切ってキャンプ場に到着した二人は、たき火を囲みながら、以下の話を聞かせてくれました。

音を追いながら、小高い丘の向こうまで行ったのですが、そこには何もありませんでした。そこで二人は歩き続けました。時々立ち止まり、音に耳をすませて、歩を進めていきました。歩き、立ち止まり、歩くを繰り返しているうちに、少しも音に近づいていないことが明らかになりました。歩いても、歩いても、音が大きくならないのです。

「もうちょっと、もうちょっと」と思いながら歩いているうちに、突然音がやみ、あたりは静寂に包まれました。そして二人は自分たちが延々と歩いていることに気づいたのです。暗い森の中で孤立した二人は、踵(きびす)を返し、速足でキャンプ場に向かいました。優に一時間以上歩いた末、丘の上からたき火の炎が目に留まり、無事にキャンプ場に戻った次第です。

奇妙なことは、友達と僕の間で、音がやんだタイミングがずれていたことです。二人に言わせると、キャンプ場を発ってから1時間15分後に音がやんだといいます。僕にとって、音は二人が発ってから二時間後に止まりました。これはどういうことでしょう……?

その夜、僕たちはまんじりともせず一夜を明かしました。その後、トレッキングをしている間に奇妙なできごとが起きることはありませんでした。でも、結局あの音が何だったのかは分からずじまいでした。

5日後にビジターセンターに戻り、公園内で工事が行われているかどうかを尋ねたのですが、心当たりのある人は一人もいませんでした。それ以来、僕はずっとこのできごとのことが気になっています。

当サイトの記事や画像を許可なく転載することをお断りします。

[b.glen]細胞レベルで甦るエイジングケア

・私は山に住んでる(2016年5月16日)


・最近、「山怪」という本を読みました。これは日本の山間部で起こった怖い話を集めた本です。狐にばかされる話が多いですよ。

不思議な話大好きさん(2016年3月19日)


・日本でも山中で似たようなことが起こっているようです。日本ではこういうことが起こると、狐にばかされたとか言いますよね。日本とフィンランドで似たようなことが起こるというのは興味深いですね。

一人で山に行きたくないさん(2016年1月24日)

コメントをどうぞ

お名前

メール(省略可)

あなたのサイト(省略可)

コメント

Powered by CGI RESCUE®

時間にまつわる不思議体験をしたことがありますか? お話を聞かせてください!