

スキーをしていた男性が大事故を起こし、次に気がついた時……
先週、友達とスキー場に行きました。僕はスキーをするのですが、友達はスノーボーダー(スノーボードをする人)です。
ある時点で僕たちはリフトに乗ろうとしていました。でも、そのリフトに乗るのは僕たちが最後でした。丘の頂上で強風が吹きだしたので、操作員はリフトの操業を中止することを決めたのです。
頂上に着いた僕は友達に「下で会おう」と声をかけました。というのも、僕が猛スピードで坂を降りようとしていたのに対し、友達は雪を掘りながらゆっくり進もうとしていたからです。その坂はかなりの急こう配で、ほかにスキーをしている人は皆無だったので、直進することを決め、木立に向かって滑っていきました。
ここから状況は変になっていきます。木立が迫るにつれて、雪が不安定になり、スキーをコントロールできなくなりました。そんな中、右足が氷の塊に捕らわれ、僕は大木に激突しました。
高速で木にぶつかったら、大半の骨が折れ即死するのが普通です(もっと穏やかな衝突でも亡くなる人はあとを絶ちません)。ところが、奇妙なことに激痛はちっとも感じませんでした。
その時、僕の目に映ったのは柔らかな白の光でした。身の周りでは電気音がブンブン鳴っていたような気がします。そして白い光はフェードアウトして真っ暗になりました。
次に目を開けた時、僕は丘のふもとでリフトを待つ人々の列に並んでいました。フェードアウトしてからその時点までの記憶は一切ありませんでした。まるで何者かの手によってその場所に置かれたかのようでした。
その時、僕は愚か者のように見えたに違いありません。なぜなら、スキー板を脱ぎ、まるで脚と腕が新しく生えたかのように見つめていたからです。あざや、かすり傷や、傷跡は一切ありませんでした。にもかかわらず、僕は自分が時速80キロメートルで真正面から木に激突したことを確信していたのです。
友達がスノーボードで降りてきた時、僕は彼にこう尋ねました。「俺についてきた? 俺がぶつかるところを見た?」と。友達はまるで「頭がおかしくなったのか」とでも言いたげに僕を見て、「お前が木立の方に滑っていってから、姿を見失った。お前は高速で滑るのが好きだから、ついていく気は毛頭なかった」と言いました。
僕がリフトの椅子に腰を下ろした時、かなり動揺しているのが見てとれたのでしょう。リフトの操作員は心配そうに「スキーパトロールを呼びましょうか?」と声をかけてくれました。僕はそれに対して「いいえ結構です。この世界は意味をなさなくなりました。リフトのスピードを落とす必要もありませんよ」と応えておきました。
僕は元の時間軸で命を落とし、別の時間軸に来たのでしょうか……?
・わー、まるで誰かにタイムワープで移動させられたっぽいですね。怪我がなくて良かったですね。
こおろぎさん(2017年4月28日)