

骨董市で塗りのお膳を物色していたら、一枚の紙きれが……
15年くらい前のことです。当時骨董品に興味があった私は、京都で定期的に開催される大規模な骨董市によく足を運んでいました。これはある古道具屋さんのブースで塗りのお膳を物色していた時の出来事です。
店頭に無造作に積み上げられたお膳を、一つづつ傷がないか丹念に見ていたら、一枚の紙切れがふっと目の前に現れたのです。それは10cm角程の古い新聞の切りぬきのようでした。お膳は剥き出しで置いてありましたし、古道具を包んでいたとしても小さすぎて、いったいどこに挟まっていたのかと手に取ると、丁度日付の部分が読めたのです。
「昭和00年のか?」と思わず呟いたら、突然誰かに「何月や?」と声をかけられました。驚いて横を見ると、しゃがんで古い絵葉書を見ていたら知らないおじさんでした。「0月ですけど」と答えると、また「何日や?」と聞いてくるのです。不躾でちょっと怖かったのですが、「00日ですけど」と答えると、暫しの沈黙のあと「わしの誕生日や」と言うではありませんか! 免許証を見せてもらったら、まさにその人が生まれた日の新聞だったのです。
偶然の一致にしてはちょっと不思議な体験でした。