

ある夏の日、少年たちが廃棄された鉄道のトンネルを通り抜けたら……
これは何年も前……僕が10歳か11歳だったころ、スコットランドで起きたできごとです。
ある日曜日の午後のことです。僕は数人の友達と連れ立って、使われなくなった鉄道の上を歩いていきました。その年の夏は何度もそこを通って遊んだものです。

橋の下の短いトンネルを抜けると、そこには古い駅と切符売り場があるのですが、何年も前に廃棄され、使われていませんでした。駅舎の屋根は部分的に抜け落ちていました。僕たちは、いたずらっ子の例にもれず、よく駅舎の中におっかなびっくり忍び込んだものです。
さて、トンネルの終わりまで近づいた時、煙突から煙が立ち上っているのが見て取れました。駅の扉は開け放たれ、多くの人々がその中にいるようでした。
その時、男がカーテンを少し開けて、窓越しに僕たちをじっと見ていることに気づきました。彼はビクトリア時代の男性のように、立派な口髭をたくわえていました。それを見た僕はまず戸惑いを覚えました。でも、戸惑いはすぐにパニックに変わり、僕たちは一目散でトンネルの中を走っていきました。

あの日、何が起きたのか、説明することはできません。でも、全員がその光景を目にしたことは確かです。
その後、僕たちがくだんの駅に戻ったかどうかは記憶に定かではないのですが、橋の上を車で通り過ぎた時、下を覗いて、駅が廃屋であることを確認したことは覚えています。