

成人式で出会った見知らぬ男性。みんなが知っているのに、なぜ自分だけ思い出せないの……?
1980年代に行われた成人式のことでした。成人式は町の体育館で行われ殆どの人が参加していました。式が終わるとその場で懇親会が行われました。式に参加した人達でテーブルをセットし用意された飲み物と軽食を並べただけの簡単なものでしたが久々に会う同級生達との会話ははずみ、とても楽しいものでした。
当時も今も仲の良い4人で話をしていると、ひとりの男子が会話に加わりました。「今何してるの?なつかしいね」とか当たり障りの無い会話をしていたと思います。ところが、その男子の顔を見てもどーにも思い出せないのです。思い出せないと言うよりも見たことないような顔でした。でも20歳までの数年の間に背が伸びたりやけに大人っぽくなったりした人もいるので見かけが変わったのだろうと思っていました。
一緒にいた他の3人は良く知っているみたいだし、その男子は私のことも知っているような話しぶりだったので適当に話を合わせていましたが話しをしている最中でも誰だっけと考えていました。
町には小学校が二つ中学校が一つあります。なので中学に入学すると約半分は知らない生徒でした。当時、私が在籍していた学年は4クラスで120人位の生徒数でした。学年の半分は小学校からの同級生で残り半分は中学校からだとしても、何となく居たかなくらいは覚えてると思うのです。
会話の中にその男子の名前が出てこなかったので男子が去った後に思い切って友達に聞いてみました。
「今いた人の名前なんだっけ?」
「やだ?? 野原ひろし(仮)君じゃない」
顔どころか名前も初めて聞く名前でした。
「私と同じクラスになったことあった?」
「無いよ」
友達の中にいた小中学校ずっと同じクラスの人が答えてくれました。同じクラスになったことが無かったら覚えられなかったのかな、きっと大人しくて目立たない人だったのだろうと覚えてないことを他の3人に伝えました。
ところが野原ひろし君(仮)は成績優秀で○○部(忘れた)でも活躍、表彰されたりと非常に目立つ存在だったらしいのです。野原君を知らないなんて頭がおかしくなったのかと心配されましたが悪い冗談として受け止められました。
家に帰った後アルバムで確認したところ驚くべきことに野原君は存在してました。あの時のショックは今も忘れられません。
信じてもらえないと思い成人式以来同級生にはこの話をしてしていません。同総会に野原君は毎回不参加でしたし特に接点もないし会ったこともないので、すっかり忘れていました。でもこの前、同級生の友人の集まりがあった時に噂話しが出たので思い出しました。野原君のエピソードを聞いてもさっぱりです。