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マアナアドゥ

インド・タミールナドゥ州の州首相の政治集会が催行される日に、彼の暗殺を防ごうとする男と悪徳警官の2人がタイムループにハマってしまう。

タイムループに囚われたヒーローと悪者がお互いに相手を出し抜こうと死闘を繰り広げるSFアクション! 

本作はインド映画だが、使用言語はヒンディー語(インドの公用語)ではなく、タミール語。2021年11月25日にタミールナドゥ州で公開され、15億6千万ルピー(約2億7千万円)の興行収入を叩き出した。大ヒットしたため、主演俳優2人を再起用して続編を制作することが決定。それに加えて、本作の監督・脚本家であるヴェンカト・プラブは、異なる俳優を起用して、本作のヒンディー語版とテルグ語版を同時に撮る予定だという! このような話を聞くと、インドが多民族・多言語国家であることを再認識させられる。題名の「マアナアドゥ」はタミール語で「集会」を意味するらしい。

筆者は日本未公開作品を見るのが好きという天邪鬼な性格なので、本作を探し出して鑑賞した次第。

主人公のアブドゥル・カリーク(シラムバラサン・ラジェンダー)は、友人の結婚式に出席するために飛行機でタミールナドゥに向かう。友人は当地の名士と政略結婚をさせられようとしていた。そこで花嫁を秘かに結婚式場から連れ出し、愛する男性と駆け落ちさせるというのがアブドゥルと仲間たちの作戦だった。この作戦は成功するが、逃避中に悪徳警視副総監のダヌシュコディ(S.J.スルヤ)に捕まり、州首相の暗殺計画に巻き込まれてしまう。アブドゥルは表向きの犯人に仕立てられ、政治集会の最中に公衆の面前で州首相に銃口を向け、引き金を引くよう命じられたのだ。言うことを聞かなければ友人たちの命はないという! アブドゥルが引き金を引く頃合いを見計らって、カメラマンに扮したスナイパーが秘かに発砲し、確実に要人の命を奪うという計略であった。

ここまで鑑賞した時点で、2022年7月に「とある国」で起きた「例の大事件」を連想した。これって要人暗殺の典型的な手口ではないか?

さて、悪者たちの計画は成功し、アブドゥルは暗殺犯としてその場で警官に射殺されてしまう。だが、ここで番狂わせが生じた。アブドゥルの死が時間逆行を起動するということだ。かくして主人公はその日の朝に戻り、飛行機の中で意識を取り戻す。一日をやり直す機会を得た彼は、結婚式から逃避する際に道順を変え、警察に出くわさないよう努めるが、結局のところまたしてもダヌシュコディに目をつけられ、射殺されて、機中に戻ってしまうのだった。

自分がタイムループにハマったことに気づいたアブドゥルは、暗殺を防がない限りループから脱出できないことを悟る。ところが意外な事実が判明。ダヌシュコディもまたタイムループに囚われていたのだ。前回のループでダヌシュコディの血液が誤ってアブドゥルに輸血されてしまったので、図らずも2人は運命共同体になった。というわけで二人はお互いに相手を出し抜き、相反する目的を達成するために、壮絶な闘いを繰り広げることになった。アブドゥルは政治集会の催行を中止させて暗殺と暴動の発生を防がなければならない。一方、ダヌシュコディはアブドゥルの目的を阻止しなければならない。

本作の見どころは、悪役が強敵なので、主人公が中々目的を達せられないということだろう。悪役もまたタイムループに囚われ、すべてのループを覚えているので、警官としての立場を利用して先手先手を打ち、ヒーローを追い詰めることができるのだ。とはいえ、そんな悪役にも弱みがある。それはアブドゥルを殺せないということ。なぜなら、殺せば時間が逆戻りして元の木阿弥になるだけだから!

インド映画といえば、観客へのサービス精神が旺盛で、華やかな歌と踊りがところどころに挿入されている作品が多いが、本作はSFアクションのせいか、歌と踊りは一回だけ。主人公が結婚式会場で余興のために歌い踊るという設定になっている。主役のシラムバラサン・ラジェンダーは歌がうまく、ダンスのキレもよくて、目と耳を楽しませ元気にしてくれた。

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